印刷豆知識

【用紙】 性質


【紙の目】
製紙のとき、繊維は流れる方向に平行に並んでいます。その向いている方向を「紙の目」といいます。1枚の全紙にした際に、紙の目が長辺に平行なものを「縦目」の紙といい、短辺に平行なものを「横目」の紙といいます。紙の目は折り曲げや伸縮に影響し、目に沿っていれば折りやすく、目の直角方向には折り曲げにくくなります。用紙は縦目を「T」、横目を「Y」と表示して販売しています。本の開き具合などにも関係することですので、製本時にはあらかじめ考慮に入れる必要があります。


【用紙】 種類


【中質紙】
中級紙とも呼ばれます。上質紙よりも白色度・平滑度がやや劣り、出版本文用紙などとして用いられます。


【上質紙】
上級紙とも呼ばれます。非塗工紙(表面に白土などを塗っていない紙)としては最も白色度・平滑度が高く、高級な出版、商業、事務用印刷に用いられます。


【アート紙】
こちらは塗工紙です。あらかじめ抄きあげた上質紙の上に白土などの顔料を塗り、艶出し機(スーパーカレンダ)で仕上げた紙で、白色度・平滑度に優れ、カラー印刷の発色に適します。特アート、並アート、マット(艶消し)アート、片アート(片面塗工)、両アート(両面塗工)などの種類があります。


【コート紙】
抄紙機の途中に設けた塗工装置で加工した紙で、コート量がアート紙よりも少なく、平滑度はやや落ちるものの廉価・軽量なのが特徴です。軽量コートや微塗工紙というコート量のさらに少ない種類が、廉価性・軽量性を買われてチラシ、DMなどに多く用いられています。


【キャストコート紙】
アート紙のコート層を厚くし平滑度を非常に高めた紙で、強い光沢があり、カタログのカバーなどに用いられています。


【クラフト紙】
包装紙などに用いられ、引っ張り強度を高めるために繊維の長いクラフトパルプを原料として作られます。漂白しないパルプを使う「未ざらし」、半分程度の「半ざらし」、十分に漂白する「さらし」などの種類があります。


【板紙】
厚手の紙で、黄ボール、白ボール、マニラボール、段ボールなどがあり、黄ボールには直接印刷する事はなく、白・マニラには直接印刷しパッケージなどに用いられます。段ボールは外圧に強く、輸送・保管資材として使われます。


【用紙】 寸法規格


市販されている、印刷用紙はメーカーに関係なく日本工業規格(JIS)によって原紙寸法が統一されています。JIS規格にはA列、B列など5種類があり、その他よく使用される紙として、A判よりひと回り大きい菊判や、B判よりひと回り大きい四六判の用紙があります。


【紙の取り具合】
印刷用紙には上記のような規格があるため、印刷物のサイズを決める際には、紙のロスを抑えるためにその規格寸法からどのように取るかの取り具合を考慮に入れる必要があります。


【紙の連量】
印刷業界では、洋紙は1,000枚、板紙は100枚を単位として取り引きします。この単位を連(R)といいます(紙質によっては500枚、100枚が1包の場合もありますが、連は1,000枚で扱います)。
1連の重さはA判かB判かといった大きさや紙自体の厚さによって異なります。この1連の重さをkgで示した値を連量といい、同じ判サイズの紙ならばその厚さに比例して連量が大きくなるため、印刷業界では一般に連量を持って用紙の厚さを表示します。
例えば上質紙の場合次のような判サイズによって連量が違ってきます。
四六判で90kgの紙が
B判では87kg、
菊判では62.5kg、
A判では57.5kg
しかし判サイズによって連量が変わるのは取り扱いにくいという事から、1㎡あたりの重量で厚さを示すメートル坪=g/㎡という単位もあります。


【印刷】 凸版印刷


版の凸部に印刷インキを着け、そのインキを用紙に転写する印刷方式です。印刷方式としては最も古いもので、740年頃(唐の玄宗の時代)木版による文字印刷が始まっていたとされています。
特徴としては、
①活字で組んだ版を直接印刷することができ、必要な文字(活字)の差し替えも容易。
②他の版式に比べ文字が鮮明で、文字印刷に最適。したがって名刺、はがき、案内状などの印刷や書籍や雑誌のページ物印刷に用いられている。
といった点が挙げられます。


【印刷】 平版(オフセット)印刷


版材の同じ平面上で、文字や絵柄の部分には印刷インキが着肉し、それ以外の部分には着肉しないという化学的方法を使ったものです。最初は石版石(炭酸カルシウムが主成分で大理石に似ている)を使っていましたが、現在では主にアルミニウム板を用います。表面を化学的に清潔にし、製版時に文字や絵柄の部分を油性にしておき、印刷段階で版に水を与えると文字や絵柄でない油性になっていない部分だけ水を含みます。この状態で版に印刷インキを着けると、文字や絵柄の油性部分だけに印刷インキが着肉されるという仕組みです。


【印刷】 凹版(グラビア)印刷


印刷される部分だけが凹刻されているものです。印刷インキは全面にわたってやや多量に着肉したのち、表面の余分の印刷インキをドクターという鋭利な刃物で版面の一方からかき取ります。版材は古くから銅版が最良とされ、直刻銅版(彫刻刀で彫る)、エッチング(薬品で腐蝕する)、グラビア(写真製版を応用して銅版上に小さな面積一定の網点を作り、原稿の濃淡に応じてその網点の深さを変えたもの)などがあります。


【印刷】 孔版(スクリーン)印刷


この版材はただの一枚の薄い膜に過ぎず、それは例えば謄写版原紙のような蝋紙でも構いません。文字や絵柄の部分はなんらかの方法で切り抜くか孔を開けておきます。これを絹布や金属やナイロンの細い網で支持し、インキローラーやスクイジーというやや厚いゴム板などで印刷インキを与えると、インキは版の開いた部分を貫いて被印刷材料に印刷される事になります。